男子レスリングの谷口慧志(たにぐちけいじ)選手が頸椎損傷の重傷を負う事故に見舞われていたと、11月22日発売の「週刊文春」が報じています。
この事故は9月13日に起こったとの事ですが、吉田沙保里選手などを育てた栄和人(さかえかずひと)強化本部長をはじめ、日本レスリング協会の幹部達はこの事故をマスコミに公表していないと言います。
この記事では、事故の経緯や谷口慧志選手の経歴、また栄氏をはじめとしたレスリング協会の対応などについて、見ていきたいと思います。
目次
谷口慧志選手に起きた重大事故の概要 頚椎損傷と「週刊文春」
それではまずは初めに、谷口慧志選手の事故の概要について見ていきたいと思います。
今回、谷口選手の事故について報じたのは11月22日発売の週刊文春だったのですが、同誌によりますと以下のような経緯があったと言います。
まず谷口選手が大怪我を負う事故が起きたのは9月13日の事で、栄和人強化本部長が現場責任者を務めた、9月11日からの男子強化合宿の3日目だったとの事です。
事故は、谷口選手と世界選手権に出場した有力選手のスパーリングで起きたと言います。
この事故の直前には、林芳正文部科学大臣が激励に訪れていたそうですが、目撃者の証言によると、以下のような状況で事故が起きたそうです。
スパーリングで二人が組み合った状態から、相手が谷口君の脇下をくぐり腕をロックし、反り返って後方に投げた。
二人ともマットに倒れたのですが、谷口君は受身を取れないまま頭から落ちた。
引用:「週刊文春」2017.11.22発売号
合宿の参加者曰く、谷口選手はその後、救急車で病院に運ばれ一命は取り留めたものの、首から下が自力で動かせない状態で、現在は車椅子に乗ることを目標にリハビリに励んでいると言います。
頸椎損傷(けいついそんしょう)の重傷との事です。
頚椎損傷(けいついそんしょう)
頚椎(頭を支える7つの首の骨)が強い衝撃や加齢などにより変形、脱臼、骨折などを起こした状態を言います。
(引用:http://www.dokutoruyo.com/)
骨折・脱臼などで起こる頚椎損傷は、頚椎それぞれの部位が司る神経系の麻痺や、しびれが一番現れやすい症状となります。
(中略)
損傷の程度が軽ければ、四肢を動かした際のしびれや軽い麻痺程度に留まり、後遺症も少なくて済みますが、頸髄に達する深い損傷では、場所にもよりますが最悪の場合、四肢や体幹が完全に麻痺してしまう事もあります。
谷口選手は、8月の全日本学生選手権・男子グレコローマン85kg級の初優勝をはじめ、多くの大会で上位入賞を果たしており、東京オリンピックでの活躍が期待される有望株だったようです。
この事故を受け、拓殖大レスリング部監督の須藤元気さんは以下のように語っていたそうです。
僕も見舞いに行ったのですが……。
まだ若いですし、早い快復を祈っています。
引用:「週刊文春」2017.11.22発売号
ちなみに余談ですが、須藤元気監督とは元格闘家でタレントの、あの須藤元気さんのようです。(参照:wikipedia)
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さらに、谷口選手を小学生の頃から指導していたという、京都八幡高校の浅井努監督も次のように話していたとの事です。
彼は本当に素直で吸収力のある子。
学生選手権で優勝した後、学校へ遊びに来て、「これから強化合宿です」と目を輝かせていた。
まさかあんなことになるとは考えられませんでした。
引用:「週刊文春」2017.11.22発売号
一方、現場責任者を務めた栄和人強化本部長は、事故発生後、
面倒な事になったから強化本部長を辞めたい。
と周囲に漏らしていると言います。
週刊文春が栄氏を直撃したところ、
誰からこの話を聞いたんですか?
責任のなすりつけ合いなんてしていないよ。
俺が隠しているって? そこまで言う人は少ないんだけどな。
強化本部長の私としても簡単には答えられないので(協会で)話し合って折り返します。
引用:「週刊文春」2017.11.22発売号
と答えたとの事。
その後、週刊文春のもとに栄氏からの連絡はなかったそうですが、レスリング協会からは、
JOCを通じスポーツ庁に報告しており、隠蔽の事実はありません。
事故の対応は西口茂樹強化副本部長に一任しております。
引用:「週刊文春」2017.11.22発売号
との回答があったそうです。
以上が、週刊文春による事故の報道の概要となっております。
谷口慧志選手の事故は隠蔽された? 強化合宿の日程など
今回の事故についての週刊文春の報道を受け、ネット上で関連情報を探ってみましたが、11月21日の時点では、他の大手ニュースの報道などは見つかりませんでした。
かろうじて見つけられたのは、日本レスリング協会・公式HPの11月13日の記事による、今回の事故の事と思われる内容の記述でした。
~前略~
須藤監督はチームの団結力についてこう話した。
「(インカレ男子グレコローマン85kg級優勝の)谷口慧志がけがをして、リハビリを頑張っている。選手たちの気持ちの中で、『谷口も頑張っているんだから、オレらも』という気持ちが出てきたんだと思う。」
谷口は8月の全日本学生選手権で優勝した後、練習中のけがにより、長期入院を余儀なくされ、主力メンバーから離脱してしまった。
拓大はメンバー8人中4人が、谷口と同じ京都八幡高出身だ。
浅井は「中学校からずっと一緒に頑張ってきた仲間。離脱したことは、ショックだった。けれど、お見舞いに行くと谷口は笑顔で何ともないふりをしていた」と、けがなく試合に出られることに、いつも以上に感謝の気持ちを忘れずにマットに上がったそうだ。
~後略~
しかし、これだけの情報では、今回の事故がどのようにして起こったのか、また谷口選手の容態などもほとんど分かりません。
参加選手が頚椎損傷の重傷を負うほどの事故が、2ヶ月以上経った現在でも、ほとんど報じられないというのは違和感を感じます。
もしかすると筆者の調査不足なのかも知れませんが、それにしてもこの情報の少なさは、週刊文春の言うように、レスリング協会の対応が”隠蔽”と疑われても仕方ないのかも知れません。
また今回の事故は、9月に行なわれた男子レスリングの強化合宿で起きたとの事ですが、日本レスリング協会の公式サイトを調べてみると、この合宿のスケジュール等は以下のようになっていたようです。
【日程】9月11日~16日
【場所】東京・味の素トレーニングセンター
【参加選手】世界チャンピオンを含む世界選手権代表選手、強化スタッフ
この強化合宿の参加者の具体的な情報は見つけられませんでしたが、時期的に谷口選手も参加していたのは間違いなさそうです。
また同合宿では、9月12日に公開練習もしており、練習終了後には囲み取材も行われていたようです。
しかし、日本レスリング協会・公式HPのニュース情報をざっと見る限りでは、この事故についての詳しい説明は見つけられませんでした。
さらに須藤元気監督のツイッターや、同じ拓殖大レスリング部で京都八幡高校出身の浅井翼選手のフェイスブックも見てみましたが、それらしい記述はありませんでした。
谷口慧志(たにぐちけいじ)選手の経歴や現在
また、この事故で重症を負った谷口慧志選手の経歴や活動などは、以下のようになっていたようです。
長崎国体
グレコ84kg級 谷口慧志(3年) 3位 pic.twitter.com/If8nzdRaV1— 京都八幡高校レスリング部 (@kyotoyawata_) October 19, 2014
谷口 慧志(たにぐち けいじ)
生年月日 1996年11月15日(21歳)
出身地 大阪府枚方市
身長・体重 171cm・85kg
学歴 京都八幡高卒、拓殖大学在学中
<成績>
- 2017年全日本学生選手権(GR/85kg級)…1位
- 2017年全日本選抜選手権(男子グレコローマン)(GR/85kg級)…5位
- 2016年全日本選手権(男子グレコローマン)(GR/85kg級)…1回戦
- 2016年東日本学生秋季新人選手権(GR/98kg級)…1位
- 2016年東日本学生秋季新人選手権(FS/86kg級)…2位
- 2016年全日本大学グレコローマン選手権(GR/85kg級)…3位
- 2016年全日本学生選手権(GR/85kg級)…2位
- 2016年全日本学生選手権(FS/86kg級)…5位
など。
(参照:http://db.japan-wrestling.jp、ほか。)
谷口選手は、大阪府出身の拓殖大学3年の21歳で、現在は東京都・八王子市に在住のようです。
筆者はレスリングに詳しくはないのですが、上記の通り全国区の大会でトップクラスの成績をおさめられてきたようですし、週刊文春でも「東京五輪での活躍が期待される学生選手」と記載されていますので、有望な若手選手である事は間違いないようです。
また谷口選手は、フェイスブックアカウントを開設しているものの、あまり更新されていない事と、その他のSNSについてもネット上には見当たらない事から、今回の事故による怪我の容態については、詳細な情報は掴めませんでした。
今後、新たな情報が判明した際は、改めて追記させて頂きたいと思います。
栄和人(さかえかずひと)氏の経歴など
また今回の事故が起きた、強化合宿の現場責任者を務めていた栄和人強化本部長とは、以下のような方だそうです。
【 #栄和人氏 、愛知県アドバイザーに】愛知県は教育・スポーツ振興財団のスポーツアドバイザーに、至学館大学レスリング部元監督で、パワハラ問題などで要職を辞任した栄和人氏(58)を起用すると発表しました。1月から非常勤で週2回程度勤務する予定です。
記事はこちら⇒https://t.co/S5flyjiKPZ pic.twitter.com/CM1a1o9uD0
— 時事ドットコム(時事通信ニュース) (@jijicom) December 26, 2018
栄 和人(さかえ かずひと)
生年月日 1960年6月19日(57歳)
出身地 鹿児島県
血液型 A型
身長 166cm
学歴 鹿児島商工高(現樟南高)~日体大卒
活動 元レスリング選手、日本レスリング協会強化本部長、至学館大学レスリング部監督、など
<経歴>
- 1980年、全日本大学選手権優勝
- 1983年、全日本選手権初優勝
- 1987年、世界選手権(フランス)3位
- 1988年、ソウル・オリンピック出場
- 1990年、京樽に選手兼女子レスリング部コーチとして入社
- 1996年、京樽を退社後、中京女子大学附属高等学校(現:至学館高等学校)教諭に赴任
など。
栄氏もかつてはレスリング選手として活躍していたようですが、近年は主に指導者として活動。
教え子には、吉田沙保里選手、伊調千春選手、伊調馨選手、登坂絵莉選手、土性沙羅選手などがおり、多くのオリンピックメダリストを輩出していたようで、優れた才能を持った方のようですね。
終わりに
という事で、男子レスリング・谷口慧志選手の事故の報道に際し、その概要や同選手の経歴、またレスリング協会の対応など、現時点で判明している情報をお伝えさせて頂きました。
レスリング協会は、今回の事故について”隠蔽”説を否定しているようですが、しっかりと経緯を説明する事が、今後の事故防止のためには必要な事だと思われます。
レスリング界の信用を損ねないためにも、今からでも誠意ある対応をして頂きたいなと思います。