高齢化社会が進行する現代の日本ですが、そんな状況下で、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という病気の存在が脅威となってきているようです。
いまや肺炎は日本の死亡原因の第3位に浮上したとの事ですが、肺炎が3大死因に入った主な要因は、高齢化にあると言われています。
肺炎で亡くなる人の9割以上は75歳以上の高齢者とされ、中でも特に多いのが「誤嚥性肺炎」なのだそうです。(情報参照元:www.news-postseven.com)
この記事では、そんな誤嚥性肺炎と高齢者の関係性や、意外な患者の男女比の割合、そして誤嚥性肺炎の対策や予防法などについて、探ってみたいと思います。
目次
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)とはどんな病気? 症状や兆候は?
それではまず初めに、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という病気について、簡単にご説明させて頂きたいと思います。
まず、食物を飲み込む働きを嚥下(えんげ)機能と言いますが、食物は通常は、口腔→咽頭(いんとう)→食道を経て、胃に至ります。
この際に、口から食道へ入るべきものが誤って気管に入ってしまうことを、誤嚥(ごえん)と言います。
さらに誤嚥したものが肺に入り、起こす炎症が誤嚥性肺炎なのです。
また、誤嚥性肺炎の原因には、飲食物の誤嚥以外にも、以下の2つの原因も考えられるそうです。
1.細菌を含む分泌物の誤嚥
口の中(咽頭や喉頭)の粘膜に細菌の巣(コロニー)が出来ており、細菌を含んだ唾液などの分泌物を誤嚥する。
2.胃食道逆流による内容物の誤嚥
夜間睡眠中、胃食道逆流により胃内容物を誤嚥する。(この場合、酸や消化液を含んでいて気道粘膜を損傷するため、肺炎が起こりやすくなる)
また肺炎の典型的な症状には、発熱、咳、痰(たん)といったものがあります。
しかしこれらの症状はなく、
- なんとなく元気がない
- 1日中うつらうつらしている
- 食事中にむせこむ
- 喉が常にゴロゴロ鳴っている
- 唾液が飲み込めない
- 食事に時間がかかる
- 痰が汚い
- 失禁するようになった
などといった、一見、肺炎とは関係がないと思われるような症状でも、診断の結果、肺炎だと判明する場合があるそうです。
特に高齢者の場合は、一般的な熱・咳・痰などの他に、上記のような軽い症状にも関わらず、肺炎が進行していることもしばしばあると言われています。
また高齢者は、わずかな誤嚥が重篤な肺炎や呼吸器疾患につながりやすいため、誤嚥性肺炎に関して、周囲の人が十分に注意しておく必要があるとも言われています。
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の男女比や、高齢者の肺炎の割合
また高齢者のかかる肺炎の多くが、上述した誤嚥性肺炎であると考えられていて、高齢になるほどその割合は高くなっていくようです。
高齢者の肺炎の多くが、「誤嚥(ごえん)」といわれています(70歳以上では70%以上が、90歳以上では95%近くが誤嚥性肺炎であると言われているようです)。
引用:http://www.kanto-ctr-hsp.com/ill_story/201312_byouki.html
さらに、肺炎で亡くなる高齢者の約7割が、誤嚥性肺炎だという情報もあります。(情報参照元:https://kaigo.news-postseven.com/5523)
高齢者に誤嚥性肺炎が多い理由は、咽頭蓋(こうとうがい)の筋肉が弱く、しっかり蓋をすることが出来ないため、食べ物や唾液が肺に入ってしまい、肺が炎症を起こしてしまう(=誤嚥性肺炎)からだと考えられているようです。
そして、この誤嚥性肺炎は男女で発症割合に大きな差があるようで、その比率はおよそ、男性:女性=3:1といったデータも見受けられました。
また誤嚥性肺炎は、脳血管障害やパーキンソン症候群、認知症の方に多く合併するとも言われていて、その理由は、これらの疾患では、嚥下障害(喉の神経や筋肉が正常に働かないことで、嚥下に障害を来たす)があり、誤嚥を起こしやすいからだそうです。
誤嚥性肺炎 男性高齢者がなりやすい理由は?
といったように、誤嚥性肺炎の症状や男女比、また高齢者がこの病気に罹りやすいという事などをご説明してきました。
では次は、一体なぜ誤嚥性肺炎の多くの場合が、男性に発症するのかという理由について見ていきたいと思います。
嚥下をスムーズに行うための喉の筋肉は、早い人だと40代から衰え始めるそうですが、誤嚥性肺炎の患者が男性に多い傾向については、はっきりとした理由は分かっていないそうです。
また、喉の筋力を示す「喉仏」の位置は、もともと女性の方が高めだそうですが、60代、70代と歳を取るに従って、男性の方が顕著に下がってくるそうです。
この理由については諸説あるものの、
一般に男性は定年退職すると、人付き合いも少なくなりがちで、喋る機会も減ってくる一方、女性は井戸端会議などと言われるように、高齢になっても外出や日常の友達付き合いを欠かさない人が多いため
といった考え方もあるようです。
上記のように、男性の喉仏が下がりやすいのは、喋る量が女性より少ないことが関係しているとも考えられているようですので、誤嚥性肺炎の予防には「よく話し、喉(の筋力)を鍛える」ことが有効だと考えられるようです。
誤嚥性肺炎 対策方法や予防は?
という事で、高齢者やその中でも特に男性が罹りやすい誤嚥性肺炎について、症状やその理由などをご紹介させて頂きました。
最後に、そんな恐ろしい病気である誤嚥性肺炎の対策や予防法について、記したいと思います。
誤嚥性肺炎の対策・予防法
誤嚥性肺炎の対策・予防には、大きく分けて、「誤嚥自体を減らす」「細菌の感染リスクを減らす」「嚥下機能の低下を防止する」といった方法が考えられるようです。
誤嚥のリスクを減らす
- 食事の工夫(食事形態やとろみをつける等の工夫)
- 食事に集中する(会話やテレビを見ながら等の食事をしない)
- 食事の姿勢(上向きではなく、前かがみで食事をとる)
- 胃液の逆流を防ぐ(食後2時間は横にならない)
感染リスクを減らす
- 口腔ケア(歯磨きなどで口腔内を清潔にし、誤嚥時の細菌を少なくして、肺炎の発生を減らす)
嚥下機能の低下を防ぐ
嚥下機能の低下を予防するには、簡単な舌や首の体操などが効果があるそうです。
また嚥下と発声は、ほぼ同じ筋肉を使っているため、発声によるトレーニングも、のみ込み力アップに効果的なのだそうです。
歌うことが好きな人は、カラオケは「のどトレ」に最適なようです。
(高い声で歌うのがおすすめで、また、高い声を出すと喉仏が上がり、低い声を出すと喉仏が下がるので、音程が上下する曲を選ぶと良いのだとか。)
また声を出すことは、のど仏の筋肉だけでなく、同時に肺の機能も鍛えられるというメリットもあるそうです。